絵本の部屋

すずらん舎がおすすめしたい
絵本のご紹介です。
絵本との新しい出会いや、絵本を選ぶ参考に
していただけると幸いです。

花さき山

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斉藤隆介 作/滝平二郎 絵  | 岩崎書店

「花さき山」は秋田の言葉で書かれたおはなしです。
だからなのか、思い入れのある

私にとってとても大事な1冊です。
厳しく、優しい秋田の地らしい
強く、深く、奥行きのある作品です。
大人の皆さんにもぜひ手に取ってもらいたい1冊です。

 

主人公の「あや」は10歳の女の子。
山菜を取りに山に入り道に迷ったあやに
山ンばが花さき山について

語りはじめるところからおはなしが始まります。
山の奥には、一面の花。

その花の中に、あやが咲かせた花もありました。
貧しい暮らしの中で、妹とおっかあを思い

我慢することの多いあや。
じぶんのことよりも、ひとのことを思ってしんぼうすると
その優しさと健気さが花を咲かせると山ンば言います。

 

「やさしいことをひとつすると、ひとつさく」
誰にも気づかれないような、小さな我慢、思いやり
それが知らないところで花を咲かせているという
それはどんなにあやを喜ばせ

それからの励みになったことでしょう。
誰に褒められるわけでもなく

報われないかもしれないけれど
誰かのためにしたささやかなことが

花さき山では花を咲かせている
そんな風に思うと、ずっとずっと強く

優しくなれそうな気がします。

 

作者の斉藤隆介さんは秋田に疎開し、出会った秋田の言葉を
その後の作家生活の中でとても大事にされていました。
斉藤隆介さんの文章には、秋田の言葉と共に
秋田の人の柔らかさ、強さ、健気さが

詰まっているように思えます。

 

そして、この絵本を強く印象づけるもの
それが、滝平二郎さんの切り絵です。
切り絵で表現された本当に美しい場面場面は
幼心にもきっと残るはずです。
同じく秋田を舞台にした斉藤隆介さんと滝平二郎さんの
ダイナミックで優しい作品「八郎」「三コ」も
ぜひ手にとってもらいたい1冊です。